ポケットの中のビスケット

 
 
僕は外に出かけるほとんどの場合、リュックサックを背負って出る。その中には地図やら雑誌やら本やら手帳やら鉛筆やら雨合羽やらタオルやら石けん箱やら歯ブラシやら、そしてカメラやら。
中に物が多く入っていればいる程、それらは僕の安心材料になる。
 
今日、カバンを持たずに出た。ズボンの右ポケットには投函する手紙を入れ、それを折りたくなかったので他の必要なものは全て左ポケットに詰め込んだ。
 
 
・鍵
・カメラ(リコーGR1s)
・財布
・携帯電話
・135ミリフイルム1本
・メモ帳
・万年筆
・目薬
・文庫本(大江健三郎『芽むしり仔撃ち』)
・自転車のライト
・ポケットティッシュ
 
 
パンパンにふくらんだポケットを見て、「入るもんやなぁ」と思った。
ポケットにこんなにも沢山の物が入るなんて知らなかった。いや、知ってはいたけれど、分かってなかった。
衝撃だった。静電気のように微弱な衝撃。
 
今、このタイミングで気づいてよかった。
「ポケットには沢山の物が入るということを分かっている」という事実は、今後の僕の人生をほんのちょっと、ほんまにほんのちょっとかもしれないけど豊かにするような気がする。
 
そういうことが多くある。そんな些細な発見を見落とさずにいければ。
 
 

 
左ポケットの中