壁を高くして、百年


本の出張買い取りをお願いした。


今まで5、6回ブックオフに出張買い取りに来てもらったことがある。初めてブックオフに本を持ち込んで売った時は、その買い取り金額の安さに驚いた。なので、出張買い取りに来ていただいた5、6回は、「安いに違いない」と覚悟を決めてお願いしたが、こちらの覚悟の壁にひるむことも躊躇することも無く乗り越えてきて、そのつどそのつど僕は覚悟の壁を高く積み上げて挑んだが、いつも相手の方が一枚上手だった。毎回毎回その提示金額に驚かされ、落胆させられた。


今回は吉祥寺の「百年」に出張買い取りをお願いした。ブックオフより百年を選んだのは、今回売ろうと思った本の中には、貴重な本、自分の好きな本がけっこうあったからで、ブックオフに置かれるよりも、あの「百年」の雰囲気の中に並べてもらいたいと思ったから(金額の問題も少しあるが)。


雨に雪が混じる中、買い取りに来て頂いた。その場で査定してくれて、即金で買い取っていただいた。(ブックオフの場合、いったん持ち帰り、後に電話で買い取り金額を報告され、銀行口座に振り込まれるという形。一度留守電に「買い取り金額は○○○○円です、ありがとうございました」とだけ吹き込まれていたこともある。)


今回は過去の経験を踏まえ、そうとう覚悟の壁を高くして挑んだ。110冊〜120冊くらい売ったが、「300円です」と言われても平然と「わかりました、お願いします」と答えようと思っていた。それくらい今回の覚悟の壁は高かった。


結果、本を売って初めて1万円を超えた。少しは部屋が広くなるかとも思ったが、森の木を2、3本切り倒したところで何も変わらず。



買い取りに来てくれた百年の方が、年も近く、学科は違ったが同じ大学の同じ学部出身だった(その方が文芸で僕は写真。僕は中退した)。「アルバイトしながら、ずっと小説を書いていた」と言っていた。「今は書いてないんですか」と聞くと、「また書きたくなったら書くと思う」と前置きをしたうえで、「小説で表現したかったものが、今、店で出来てきている」と言った。とても印象的だった。