SMスナイパー・スナイパー


忘れられない写真というのがある。



モブ・ノリオの『介護入門』(ハードカバー版)の扉にある、恐らく本人が撮ったおばあちゃんとの2ショット写真。


草間彌生がニューヨークへと旅立つ直前に撮られたモノクロのポートレイト。ものすごい決意に満ちた表情で草間彌生が壁の前に立っている。誰が撮ったかはわからない。もしかしたら本人かもしれない。「トランクの中は絵筆と、お金に困った時に売る数着の着物のみだった」というような文章が添えられていた。何で見たのだろうか、もう一度見たい。


広告批評』に1枚だけ載っていた佐内正史の写真。高円寺、電話BOX、カラー。



他にも何枚かあるけれど、中でも印象に残っているのは野口里佳がSM雑誌で撮っていた写真。


もう何年も前のこと。その日、僕は一人で出かけていて、荒川沿いをぷらりぷらりと歩いていた。川面や、鳥や、ランニング中のおじさんに声をかけて写真を撮らせてもらったりしていたところ、もともと天気は良くなかったのだけれど、急に天気が崩れ出し、雨が激しく降ってきた。古本屋を見つけ、雨宿りのために飛び込み、そこいらの本を物色していた。SM雑誌が大量に置かれている一角があり、僕はなんとなくそれらをパラパラとそれを開いた。その雑誌は『SMスナイパー』という雑誌で、アラーキーホンマタカシが連載していることで知った雑誌だった。僕にはそんなに強烈なSM趣味があるわけではなく、その時もアラーキーホンマタカシの写真を目当てに手に取ったのだけれど、ある写真に目がとまり、衝撃を受けた。魂の暗部を狙撃された。それが野口里佳の写真だった。


だだっ広い荒れ地にポツンとさびれたクレーンが一台あり、そのクレーンが縛られた裸の女性を宙に吊り上げている。
もう、衝撃だった。


数日経ってもその写真の衝撃が体から抜けず、その本を買わなかったことを強く後悔した。それ以来、古本屋に行った時は必ずそれを探したけれど、なかなかその号は見つけられないまま、もう5、6年が経つ。


そして、今日、上野の古本市で山積みにされた『SMスナイパー』を50冊以上シラミつぶしにめくっていき、見つけた!
それを見つけた!!!


たたたたん!!!











※この画像はイメージです。