僕は野球部じゃない





マクドナルドにて。


おばあちゃんが飲み物もなにも持たずにキョロキョロと席を探し、僕の向かいの二人掛けテーブルのイスに腰をかけた。

しばらくすると飲み物を二つ乗せたトレイを持ったおじいちゃんが現れた。おじいちゃんはおばあちゃんにむかって「四人掛けのテーブルって言ったろう」と怒り口調。「空いてないんだからしょうがないでしょうに。あの子たちが来てからでもいいでしょうに」とおばあちゃんが言い返し、なにやら少し険悪なムード。

僕の両サイドのテーブルが空いていたので、僕がひとつ横に移ればテーブルをくっつけて四人テーブルを作ることができた。

「おばあちゃん、僕ずれますよ」と声をかけると、「まだ娘たちが来ないから大丈夫ですよ。でも親切にありがとうね。あなたは野球部?」と、100%僕の坊主頭から判断したであろう質問に、「いえ、僕はサッカー部でした」と答えた。



しばらくして娘さんが一人来た。「この方がね、席をゆずってくれようとしたの。すぐよ、すぐ。すぐに立ち上がって声をかけてくれたの」とおばあちゃんが娘さんに話すと、娘さんがこっちに向かって会釈をしてくれた。



五分も経たずしてもう一人また別の娘さんが来た。「この方がね、席をゆずってくれようとしたの。すぐよ、すぐ、、、」と、さっきと全く同じ文言で娘さんに伝えると、その娘さんもやはり僕に向かって会釈をしてくれたので少し恥ずかしくなってしまった。



店を出る時、おばあちゃんがわざわざ僕の席まで来て「さっきはありがとうねぇ。どうぞ膝とか体に気をつけて怪我ないように野球頑張ってくださいね」と声をかけてくれた。
「おばあちゃん、さっきも言ったけど僕、野球じゃなくてサッカーです!しかも現役じゃありません!」と言おうかと思ったけれど、立ち上がって「がんばります」と挨拶して別れた。