深夜1時の電話 

先週のある日の夜中、鳴り止まない携帯電話の呼び出し音で目を覚ました。

寝ぼけたまま携帯を手にしたが、暗闇の中で光る液晶画面を見た途端、一気に眠気が吹き飛んだ。時刻は深夜1時前、画面には「おかん」と表示されていた。



おかんは十数年前に脳梗塞で倒れた。リハビリを経て、言語、身体に後遺症は残ったが、今は毎朝兄の弁当を作ったり、電動車イスでスーパーに買い物に出かけたりもしている。
しかし、脳梗塞で倒れた人が十年以内にもう一度脳梗塞を起こす可能性は、一度も脳梗塞を経験していない人よりもずっと高い。
詳しい数字は忘れたが、医者に告げられたその再発率は覚悟を強いられるほどの数値だった。
遠く離れた大阪に住む母親からの深夜の電話。僕の緊張は急速に高まり、心臓は激しく脈打ち出した。

携帯の受話ボタンをスライドし、電話に出た。


「来週、ともちゃん、とっちゃん達とたこ焼きパーティーするけど、どう?」


深夜の電話に緊張しながら出たものの、その電話の内容は、親戚のおばちゃん達とのたこ焼きパーティーのお誘いという拍子抜けするものだった。



おかん、僕、東京に住んでます。








写真のたこ焼きは近所の路面たこ焼き屋のもの。たまにしか買わないけど、おかんの電話以来ずっと頭にたこ焼きが鎮座していて、振り払うように久しぶりに食べた。