BIRKENSTOCK と Hang Over

 
 

 
 
以前、BIRKENSTOCK の高級サンダルをもらったことがある。嬉しくて嬉しくて、履き心地も良く、本当に毎日毎日履いて出かけた。夏が終わってもずっと履いていて、1年も経たない内に靴底に穴が空いた。穴が空いてもずっと履いていた。
 
大阪の友人が東京に遊びに来た時に、僕のその穴空きサンダルを見て大笑いした。母親に見せるからと言って、その友人はそれを写真に撮って帰った。
 
それからしばらくして、大きな段ボール箱が郵便で届いた。その友人の母親からだった。
 
開けてみると、レトルトカレーやら缶詰やらの食料とともに、一足の真新しいサンダルが入っていた。そのサンダルは、僕がずっと履いていた BIRKENSTOCK と色も形もデザインも全く同じだった。唯一違うのは、それは「 BIRKENSTOCK 」ではなく、「 Hang Over 」という聞いたこともないようなメーカーだったということ。友人の母親は BIRKENSTOCK なんて知らないんだろう。穴空きサンダルを履いている僕を不憫に思い、写真を見て「同じような物を」と近所のスーパーかどこかで探し、送ってくれたのだと思う。本当に嬉しかった。
 
その Hang Over にもついに穴が空いた。
 
あとどれくらい歩けば写真集、写真集。
 
 
 

 
穴を天にかざすと光明が差した。