原点復帰


今、寝れずに将棋盤を眺めていたら地震がきた。揺れとともにアパートの屋根に積もっていた雪がドサリと落ちてきて、揺れよりもその音に驚いてしまった。
地震がきたらいつも思い出すことがある。2003年に横浜美術館で開催された中平卓馬さんの『原点復帰ー横浜』展。この展示に僕は酔っぱらって行った。朝から友人とビールを開け、また電車の中でもズブロッカを煽り、桜木町駅に着いた時にはもうペロンペロンになっていた。
真っ赤な顔で入場し、みて回った。会場に一室、とても広く、ものすごく天井が高い部屋があった。その部屋の壁一面には四つ切りくらいのプリント(9割以上が白黒だった)が何百枚も貼られていた。その写真群を見上げたとたん、美術館を地震が襲った。額装されておらず、そのまま剥き出しで貼られていた何百枚のプリントはゆらりゆらりと揺れ、自分自身も揺れながらその写真群をみていて、酔いも手伝ってか催眠術にかかった様な、現実ではない様な、なんとも形容し難い不思議な気分になった。クラリクラリと、目眩の様な、幻想の様な。
以来、地震がくればいつもその時のことを思い出す。