白黒、時々、カラー


写真学生時代、僕の家で酒を飲みながら写真のことを話す機会が多々あった。
ある日、友人二人と僕の家で飲んでいた。僕が「モノクロの写真って、めっちゃ鮮やかなカラーに見える時あるもんなー」と言うと、二人は真顔で「うんうん。あるある」と答えた。僕は、ギョッ!っとしてしまった。僕はそれまでモノクロがカラーに見えた経験など一度もなかった。冗談のつもりで言ったのに、二人は「ある」と答えた。「モノクロ」という言い方がややこしかったのかもしれないと思い、「白黒の写真がカラー写真に見える時って、、、」と言い直してみたが、やはり結果は同じで、二人は「どういう時に色がついて見えるか」を話し合っていた。
よくある言い回しで「スピードの向こう側」とか「笑いの向こう側」だとかいうのがあるが、写真でのそういう「向こう側」みたいなものもあって、僕くらいの能力では経験できないのではないかと数日間考え込んでしまったことがあった。
それ以降、何人かに同じ質問をしたら「そんな経験はない」と答える人ばかりなので少し安心している。
僕は未だ白黒がカラーに見える瞬間に出会ったことがない。