カレー と ホックニー と 黒い犬

 
 
今日、人と一緒に昼ご飯を食べた。祐天寺でカレーを食べた。
 
 
その後、缶コーヒーを飲みながらぷらぷらと散歩していると、ギャラリーを併設している雰囲気のいい古書店を見つけて入った。
 
そんなに広くない店内に画集や写真集、詩集等、僕好みの本が沢山あってワクワクした。全身真っ黒で小振りの人懐っこい犬がいて、その犬と遊んでいると店員さんが温かいお茶をだしてくれた。お茶は美味しく、店員さんが呼ぶその犬の名前がとてもかわいかったのに、今、どうしてもその名前を思い出せない。
 
1980年代の『美術手帳』が多くあり、その中に デイビット・ホックニー が特集されている号が2つあった。「ほしい、ほしい」と僕が唸っていると、一緒にいた人が「買ってあげる」と言ってくれた。
 
その人が一冊の写真集をずっと見入っていて、しばらくしてから再度棚から出して見ていたので、僕は「買ってあげる」と言った。
 
 
僕が買ってあげた写真集も、その人が買ってくれた2冊の『美術手帳』も古本だし、そんなに高価なものではない。僕は決してお金を持っている方ではないし、「定期代がやばい」と言っていたくらいだから、その人もそうだと思う。
 
そんな二人が値段も変わらないものをお互いその場で買ってプレゼントしあう。一見無意味にも無駄にも思えるこういう行為が、僕はとても大切だと思う。
 
 
店を出て、買った本をその場で渡し合うのもどうかと思ったので、「お互い自分で包装して、次会う時にプレゼントしあおう」ということになった。
 
 
結局は開けるのに。中身も知っているのに。
 
 
僕はこういう行為を大切にしたい。人生論なんて語れる年齢ではないけれど、少なくとも今までの僕の人生においては、何よりもこういう行為、行動が人生を豊かにする一番大きな要素になっていたように思うし、きっとこれからもそうなんだろうという確信に近いものもある。
 
 

 
 
追記:黒い犬の名前は「きくちゃん」でした。