もみじ饅頭と高麗人参


夕方、店に出勤すると、社員さんに「昼に来た女性が、君に渡して下さい、ってこれを置いて行ったよ」と言って紙袋を渡された。
中には、にしき堂のもみじ饅頭と高麗人参ドリンクと写真展のDMが入っていた。


そのDMは先日僕がみに行かせてもらった写真展のもので、裏に手書きでメッセージが書かれており、紙袋の主はその写真展の写真家さんだとわかった。
その写真家の方とは、様々な写真展の会場で何度か顔を合わすうちに、出身大学が同じということもあり(僕は中退したけれど)、声をかけてもらうようになっていた。


写真展に行った当日、ギャラリーにその方はいなかったので、写真展と同タイトルの写真集を購入して帰った。

芳名帳に僕の名前を見つけたのだろうか、僕がこの店で働いていることを誰かから聞き、お土産までも持って店に来てくれた。
何者でもない僕に対してそこまで丁寧な行動をとってくれたことに驚き、感動もした。


「マット上よりもマットの外での行いがうんと大事だという事実を見失わないこと」


というホイス・グレイシーの言葉を思い出した。




帰りに先輩宅に寄り、グダグダと話していると、部屋の隅に子ネズミの屍骸を見つけた。
先輩は怖くて触れない、と言うので、僕がビニール袋をかましてつかみ、もみじ饅頭の箱を棺代わりにして、残っていた最後の一つのもみじ饅頭とともに亡骸を中に納め入れ、近所の公園の空き地に穴を掘って埋めた。



今日は徹夜でプリントをする。
明日は朝から夜中まで一日通しで仕事だが、高麗人参エキスを飲んで気合いを入れる。
今、NOVAの液温が上がるのを待っている。


私は眠らない。