#夢




「頼み事がある」と連絡があった翌日、夢一平は池袋のいけふくろう像の前に立っていた。どうみても一般人には見えないオシャレなのかどうか紙一重の独特なファッションで、手には日本酒『剣菱』の一升瓶。そこが渋谷のハチ公前なら、欧米の観光客が喜んでカメラを向けていただろうと思う。


二人でマクドナルドへ行き、91枚の写真を見せられた。どうやらこの写真を見て写真展用の文章を書けということらしい。「謝礼は持ってきたから」と一升瓶を嬉しそうに揺らす。「わかった、書くわ」と言うと、「じゃあ」と言って剣菱の栓を開けた。飲み干して氷だけになった爽健美茶カップに日本酒を注ぎ、乾杯してストローで飲んだ。


青空やおばあちゃんの誕生日。鼻血を垂らした金髪のモデル、女の股ぐらに腰を振る男の横にある寿司桶。札束、銃、炊き上がったご飯でパンパンの電子ジャー。今回の写真展はファッションブランド『 TOGA 』のSNS用に撮り下ろした写真と、日常のスナップ写真とを組み合わせて行われるらしい。世間のほとんどのファッション写真は「カメラ」が撮っていて「人」が撮っていない。それだからか、それらの写真から体温を感じることはほとんどないけれど、夢一平の写真からは、時に暑苦しいくらいの熱を感じる。僕が夢一平の写真に興味を持ち続けるのは、夢一平という人物に興味があるからで、結局、どれだけ時代が進んでも人を惹きつけるのは人なんだと思う。


そんな彼らしい混沌とした日常の写真に時折挟み込まれて来る書道や看板などの「夢」という一文字。コバヤシくんと呼ばれることもある彼に、「いつから夢一平っていう名前でやってるんやっけ?」と聞けば、「生まれた時からッスよ」と言ってニヤリと笑う。そういえば夢一平の名刺には写真家とも、カメラマンとも書かれていない。ただただ、「I AM A DREAM」とだけ赤く記されている。



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夢一平「Dreams and days」


TODA XTC HARAJUKU


2018.10.19 - 10.28

11:00 - 20:00


6-31-10,JINGUMAE,

SHIBUYA-KU,TOKYO


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友人の展示です。ぜひ。