「おにぎりはラブレター」
今発売中の『dancyu』は、おにぎり特集。
「おにぎりはラブレター」というタイトル(編集の人が考えてくれた!)で、自分がプライベートで撮っているおにぎり写真をエピソードとともに載せていただいています。( P102 - 103 )
他誌も含め、今までおにぎりに関してエピソードをもう5本書かせてもらっている。
いつか何かかたちにできればと思っています。
よかったら見てやってください。
オデコから赤い糸
僕は元々スクールフォトをやりたかった。
幼稚園や小学校の芋掘りや栗拾い、遠足なんかに同行して撮影する仕事。
その気持ちは僕自身の楽しかった遠足の思い出から来るのかもしれない。
昔、スクールフォトの大手みたいな会社に登録してみたことがある。面接場所に大宮のビルを指定され、部屋に入ると5人同時に面接をされ、ほとんど所有機材に関することしか聞かれなかった。
ある遠足でひとりだけ頑なにカメラに顔を向けず写真を撮らせてくれない子どもがいた。その子が唐突に「いえーい!」といってダブルピースを決めてきた。とっさに僕は首に下げているカメラをぐいと引き寄せた。急なことで顔との距離感を誤ってカメラをおデコにぶつけてしまったけれど、気にせずにその子がポーズを決めるのを撮影した。するとその子が「赤い糸が出てきた!」と興奮気味に僕の顔を指差した。カメラが当たった時に肌が切れて「ツーーー」とまっすぐ一本、きれいに血がおデコから垂れていた。さっきまで大人しく写真を撮らせてくれなかったその子は、その出来事にテンションが上がりきってひたすらその場でジャンプを繰り返していた。
予想のつかない動きをする子どもを撮影するのは楽しかったけれど、その会社自体はビジネス的過ぎて僕が求めていたものとはどこか違った。
最近ある人の紹介で60歳を過ぎたおじさんと知り合った。そのおじさんはスクールフォトを個人でやっていて、手が足りない時に手伝ってくれる人を探しているという。僕がスクールフォトに興味があることを知り、時々連絡をくれて撮影させてもらう。最初に頼まれた撮影は雨でキャンセルになった。「申し訳ない」と言って雨の中僕の最寄り駅まで来てくれて昼からビールをご馳走してくれた。
その人に頼まれた撮影の打ち合わせに出て欲しいと言われたけれど、打ち合わせ日に僕は他の仕事があって行けなかった。その人が代わりに出てくれて、「メモ送っておきますから」と言われた。Eメールで何か撮影に関する事柄のメモが送られてくると思っていたら、その日の夜家に帰ると、その人からの封筒がドアポストに入っていた。
中には撮影に関するメモと、撮影場所の地図のコピー、あと交通費、昼飯代が入れられていた。撮影場所までの道のりを赤ペンでなぞられた地図のコピーをながめながら、なんてアナログで、なんて信用できる人なんだろうと思った。
僕は野球部じゃない
マクドナルドにて。
おばあちゃんが飲み物もなにも持たずにキョロキョロと席を探し、僕の向かいの二人掛けテーブルのイスに腰をかけた。
しばらくすると飲み物を二つ乗せたトレイを持ったおじいちゃんが現れた。おじいちゃんはおばあちゃんにむかって「四人掛けのテーブルって言ったろう」と怒り口調。「空いてないんだからしょうがないでしょうに。あの子たちが来てからでもいいでしょうに」とおばあちゃんが言い返し、なにやら少し険悪なムード。
僕の両サイドのテーブルが空いていたので、僕がひとつ横に移ればテーブルをくっつけて四人テーブルを作ることができた。
「おばあちゃん、僕ずれますよ」と声をかけると、「まだ娘たちが来ないから大丈夫ですよ。でも親切にありがとうね。あなたは野球部?」と、100%僕の坊主頭から判断したであろう質問に、「いえ、僕はサッカー部でした」と答えた。
しばらくして娘さんが一人来た。「この方がね、席をゆずってくれようとしたの。すぐよ、すぐ。すぐに立ち上がって声をかけてくれたの」とおばあちゃんが娘さんに話すと、娘さんがこっちに向かって会釈をしてくれた。
五分も経たずしてもう一人また別の娘さんが来た。「この方がね、席をゆずってくれようとしたの。すぐよ、すぐ、、、」と、さっきと全く同じ文言で娘さんに伝えると、その娘さんもやはり僕に向かって会釈をしてくれたので少し恥ずかしくなってしまった。
店を出る時、おばあちゃんがわざわざ僕の席まで来て「さっきはありがとうねぇ。どうぞ膝とか体に気をつけて怪我ないように野球頑張ってくださいね」と声をかけてくれた。
「おばあちゃん、さっきも言ったけど僕、野球じゃなくてサッカーです!しかも現役じゃありません!」と言おうかと思ったけれど、立ち上がって「がんばります」と挨拶して別れた。
僕は赤パンツしか買わない
僕は赤パンツしか買わない。
なぜなら赤パンツは縁起がよさそうだから。
先日巣鴨に行った時に、赤パンの殿堂『マルジ』をみつけて赤パンを一枚買った。
袋を開けると 「幸運のおすそわけ」と書かれた紙に赤パンの端切れが添えられていた。
赤パンしか"穿かない"のではなくて、赤パンしか"買わない"。
赤パン以外に時々穿くのは、一年に一度くらいおかんが地元のスーパーで買って送ってくるパンツ。
なぜならおかんが送ってきたパンツはパワーがありそうだから。
昔、おかんからパンツが3枚送られてきて、サイズがそれぞれ S、M、LL だったことがあった。
おかん、柄で選ばんとサイズで選んで。
美味しくて美味しくてどうしよう
昔、ゴルゴンゾーラチーズのピザに蜂蜜をかけて食べるのを知ったとき、「嘘やろ!?」と思ったけど、食べてみると叫びたくなるほど美味しかった。
考えてみれば僕はチーズも蜂蜜も大好物。
ならば、ピザもパンも同じやろと思ってトーストで作ってみたら、美味しくて美味しくてどうしよう。